相続税の財産評価額の求め方は基本的に財産額から債務額を控除して求めます。
今回この点について争われた事例があります。
原告は8億3千万円の不動産と5億5千万円の不動産の合計13億8千万円を90歳で取得しました。また取得に際してそのほとんどを金融機関から借り受けて取得していました。そして94歳で亡くなられたのですが、その時の相続税に係るこの二つの不動産の財産評価額の合計は3億3千万円とかなり低く評価していました。
つまり財産額である不動産の価額からその取得に要した借入額を控除するとこのくらいだよね、ということです。確かに相続税法上規定された財産の評価方法ですので評価額自体に問題はないと思います。
ただしこれに税務署が待ったをかけます。税務署は相続税法上の評価額によらず他の鑑定評価額9億4千万円が財産評価額である旨主張し、原告の3億3千万円の評価額を認めませんでした。
ちなみに相続人はこの不動産を相続した後、ほぼ取得した当時の価額で他人へ売却しています。つまり税務署は今回の不動産購入は原告による相続税の租税回避行為であると言いたいのです。
結果的に裁判所は税務署の主張を認め原告敗訴を判示しました。確かに原則的な評価方法に基づいて評価された評価額ですので評価方法には問題はないと思います。
ただ仮に借入をしないで不動産を取得している人との差が大きいことから課税の公平性を害することも確かです。
この手の相続税の節税方法は確かに都心部ではよく聞きました。このスキームに対しついに税務署側がメスを入れることになった事例と言えると思います。